介護の仕事をするときに大声で高齢者にあれこれと指示をするのは、命令調になるのであまり望ましくありません。とはいってもガンコなお年寄りを前にすると、つい「大声の説得」をしてしまいがちです。しかし、大声が全てダメというわけではありません。
中でも耳の遠い高齢者には、大きな声でゆっくりと話してあげるのが介護者のマナーです。このときのポイントは一定の声量で全てのセンテンスを話すのではなく、意味を伝達するために大切な言葉だけを大きめの声で強調すること。日本語は英語などに比べると抑揚や強弱が少なく、しかも大切な結論が最後にくるため、もともと意味を伝達しにくい言葉だといわれています。そのため介護者は、意識的に会話にメリハリをつける努力も必要になってきます。
また高齢者との会話の中で「ほんとー」などの相づちや驚きの表現をするとき、喜怒哀楽のような感情を表出する場合は、できるだけ大げさに大声で話すことで高齢者の感情を刺激して活力を与えてあげることができます。高齢者の昔話を聞いているときに「へー」などの感動詞を大声で挿入してあげると、高齢者に「もっとしゃべりたい」という意欲を与え、心のリハビリにもなるのです。
声の音色は個人差がありますが、生まれつきと片づけてはいけません。自分の声が高めだという自覚があるなら、まずは抑揚をつけた言葉づかいを心掛けましょう。若い人ほど、早口で抑揚のない話し方になる傾向があります。仕事などで高齢者と会話をする際には、少し低めの音色でゆっくりと話すと落ち着いた印象を与えることができます。